選択理論心理士のナミです。
選択理論心理学の便利なところは「どうしてこの人はこんな行動をするの?」という疑問に対して理論で説明ができるところです。
私の父はこれまでに10回以上の転職を繰り返してきました。今回は「なぜ父はいつも相談なしに会社を辞めてくるのか」について書いてみたいと思います。
「今日会社辞めてきた」。
夕食のときに聞いたら、なかなか驚く内容です。そのたびに母が返す言葉は「辞める前に相談しなさいよ!」
何度も繰り返し言われていることなのに、父が母に「相談する」という選択をしないのはなぜなのでしょうか?
人の行動には必ず目的があります。
今回は2つ取り上げてみましょう。
- 5つの基本的欲求を満たすため(生存、愛・所属、力、自由、楽しみ)
- 苦痛から逃れるため
人は意識していてもしていなくても、基本的欲求を満たすために行動をしているのですが、満たされない場所には長く居続けることができません。
父の退職の理由はたいてい「我慢できないことがあったからガツンと言ってやった!それでも良くならないから辞めた」というもの。
会社の方針に納得がいかなかったり、人間関係で嫌なことがあったり、職場で自分を満たせなくなっていた。そして状況が良くなるようにと職場の誰かに意見したのだが、人間関係は悪化し、ますます仕事がやりにくくなった。
このときの父の「5つの基本的欲求」がどのように阻害されているのでしょうか?
親しくできる仲間がいない(愛・所属)、自分を認めてもらえない(力)、やりたいように仕事ができない(自由)、会社にいても楽しいことがない(楽しみ)、この職場にいると具合が悪くなりそう(生存)。
だから、もうこんな会社になんていられない!辞めたい!!
そうして会社を辞めることで、職場で感じる苦痛から逃れることができます。
ですが、事前に妻に相談をするとなると「また!?どんな仕事だって何もかも思い通りになんていかないわよ、もう少し頑張ってよ!!」と言われるのです。
もしこの妻の意見を受け入れるとするなら、また明日も職場で感じる苦痛から逃れられない。でもそれは耐えられない、相談するより前に辞めてしまいたいのです。
私は選択理論心理学を学んだことで、父は40年もこの状態を繰り返していたんだなぁと理解ができました。
選択理論心理学では「セルフコントロールも人間関係も技術」と教えています。自分の欲求の状態を知り、自分を健全に満たし、人間関係に対してもなるべく関係が悪くならないような行動や思考を選ぶことで、状況を改善していくことができるのです。
愛・所属の欲求の低い父は、チームで取り組む仕事よりもひとりで現場を任せてもらいながら、毎日目に見える成果をきちんと感じる仕事に就くことにより、今の仕事は長続きできているようです。このことからも、なんとなくの理想のイメージで仕事を選ぶよりも、自分の欲求(特性)に合う職場を探すことが重要だと感じています。
では、また!
※この記事は、わたし個人の経験を選択理論心理学に当てはめ、見方を変えたり改善対策している一例です。
生存の欲求は私たちの身体的側面の多くに依存しているわけではあるが、私たちは、愛・所属、力、自由、そして楽しみという四つの心理的欲求も満足させるように遺伝子によってプログラムされていると、私は信じている。すべての行動は選択時点では最善の選択であり、四つの欲求を満たすためのものである。
『グラッサー博士の選択理論』p55
選択理論心理学で考えてみると?